基本的に、収納スペースの問題から読書は文庫本かキンドル派です。
しかし、特に好きなシリーズは単行本を買ってしまいます。
今までは宮部みゆき先生の『三島屋』シリーズくらいだったのですが、
好きすぎて文庫化が待てないのでこちらのシリーズも購入してしまいました。
そのくらい面白いのです!『営繕かるかや』シリーズは!
その弐の感想などはこちらです。↓
『営繕かるかや怪異譚 その参』のあらすじ
家屋に、物に、籠った思いを営繕屋の尾端が手を加えることで住みよくする物語の第三弾です。
今回は以下の6編。
『待ち伏せの岩』
人気洋食店の塔になっている個室に、「女が住んでいるだろう」と妙な質問をする男が訪ねてきて…。
『火焔』
陰湿な嫁いびりに耐えた女性。
姑をやっと見送ったその日の夜から、まだ姑がいるかのような気配に襲われて…。
『歪む家』
ドールハウスを作るのが趣味の女性。
楽しんで暖かな家庭をイメージして作っているのに、手を加えるたびにドールハウスはおかしくなっていく…。
『誰が袖』
古い家を処分して、新しい家に住んだ男性。
妊娠中の妻の身に、好ましくないことが起き始め、男性の母がその家にまつわる「あること」を話し始める…。
『骸の浜』
河口付近の古い家に住む女性。
この街で水難にあった人の魂は、この女性の庭に上がり、
自分を見つけて欲しいと訴える…。
『荊姫』
姉を偏愛していた母が亡くなり、実家に戻った女性。
姉を思って母が植えた植物で荒れた庭を手入れしようとするが…。
『営繕かるかや怪異譚 その参』のおすすめポイント
お久しぶりの泰さん
尾端と懇意な様子のお坊さま、秦さんが数回登場します。
あの、前巻には登場しなかったのでうっかり「ニューキャラ?」と思ってしまいました。
読み返してみたら、一巻で登場しています。
一巻の「異形の人」で後ろ姿、「檻の外」で割としっかり。
お久しぶり!うっかり忘れていて申し訳ない!
シリーズも3巻目に入り、長期化を見据えたのでしょうか。
今回は登場回数多めで、その代わり隈田さんの登場は控えめです。
この先、秦さんと尾端との関係など、掘り下げられる日が来るのでしょうか。
その辺り、楽しみでおすすめポイントでもあります。
あ!庭師・堂原さんも登場しますよ!
親子関係がつらい
今回収録のお話では、「誰が袖」以外のほとんどで、「親子がしんどい」ことになっています。
特に「火焔」の嫁姑の関係は、地獄。
よくそんなに嫁に辛くあたれるな、と感心するほどです。(褒めてます)
偏屈な姑像が、田舎の老人によくあるそれで、幼い頃故郷にいたあの人を思い出すリアルさでした。
「荊姫」の姉を偏愛する母親の仕打ちも、田舎(実家と今住んでいる地域)で聞いたことあるなぁ、と…。
ひょっとして、小野先生と同郷かしら?と思うほどのリアルさ、恐ろしさをお楽しみください。
(調べたら、本当にほぼ同郷でした。小野先生。先生の出身地、大分(中津市)に程近い福岡県出身なのです、私。)
『営繕かるかや怪異譚 その参』の考察・舞台はどこなのか?
黒い天守閣のお城といえば熊本?
偏屈な老人像や、田舎の人の人間関係(近所の人が嫌なことを吹き込む感じ)が私の故郷のそれに似ているなあと、いつもより感じた三巻。
台風シーズンには、家の備えがしっかりと必要な描写などが出てきました。
正直、大分や福岡では、作中に描かれているほどの台風対策は必要ありません。
個人的な意見ですが、あそこまで被害が出るなら、宮崎か熊本、鹿児島あたりではないかと。
さらに、シリーズ中ずっと描かれている「黒い天守閣のあるお城」。
黒い天守閣の城、台風で被害が出る地域、となると熊本ではないかと!
あり得る!あり得ると思う!!
川が有名な景勝地もあるし。(全然標準語だけれども)
しかし中津(大分)もあり得るかもしれない!
舞台は熊本か?!と思っていました。
しかし、ふと自分の故郷を思い出し、調べたところ、
先生のご出身の地である中津市にも黒っぽいお城があり、
しかも作中の描写のように河口付近にあります。
先生の作り出したファンタジーの土地だということは、理解しておりますが。
イメージとしては熊本と中津市を混ぜたような感じでしょうか。
『営繕かるかや怪異譚 その参』の感想
掃除や家の手入れをしたくなる。
三巻を読んでいると、家の手入れをしたくなります。
家の障りに襲われる登場人物たちは、どこかみんな「諦め」「惰性」でその家に住んでいる印象です。
これも田舎あるあるだと、個人的に思うのですが、何かやっても「どうせ変わらない」みたいな諦め感があるのです。
不満を抱える一方で、変わりたくないかのように、変化を拒絶するというか。そういう空気があります。田舎の街には。
しかし、そんな人たちに尾端は今作で度々「手を加える」ことを提案します。
「壁紙を変えてみませんか?」「カーテンを変えてみませんか?」
作中の障りのある家は、一様に荒んでいるのです。
家は心をうつす鏡だと、断捨離ブーム?の時によく言われていましたが、その通りだと思います。
この物語の登場人物は、障りにも、自分が置かれている状況にも疲れていて、荒んでいる。
そんな人に、尾端は家に手を加えることで、諦めずに自分の生き方と向き合うように勧めてくれているように感じました。家を手入れすることで、自分を慈しんでみませんか、と言ってくれているようでした。
私も、最近疲れることが続いたので、読み終えてからちょこちょこと家の手入れを始めました。
( ´ ▽ ` )
まだまだ続いてほしいけれど
今回で三巻目。
毎巻6話ずつなので18の怪異の物語です。
ずっと続いてほしいけれど、さすがに怪異がたくさんでこの町は大丈夫か?とちょっと心配になります。( ´ ▽ ` ;)
しかし、私が知らないだけで、実は怪異はあちこちにあるものなのかも知れませんね。
4巻も楽しみにお待ちしております!小野先生!
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