『さざなみのよる』のあらすじと感想|読書感想文|おすすめの本

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『さざなみのよる』は、『すいか』で知られる木皿泉さんの小説第二弾。
2016年、2017年にNHKでお正月ドラマとして放送された、『富士ファミリー』の前日譚となる作品です。

こちらで視聴できます。↓DVDもでていますよ。・v・


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訳あって、『昨夜のカレー、明日のパン』を出版後かなり遅れて読んだのですが、
その本の帯に『さざなみのよる』が宣伝されていたので、すぐさまこちらもポチりました。

単純に言ってしまうと、「また人が死ぬ話」なんですが、それだけでないのが、木皿作品。
今回も、柔らかく癒やされました。

『さざなみのよる』のあらすじ

富士山が見える街で、近所の子供に「エセコンビニ」と揶揄される地域密着型スーパー「富士ストア」を営む三姉妹と叔母。

長女・鷹子、次女・ナスミ、三女・月美と叔母の笑子。
ナスミは、このままここにいては腐ってしまう、と一度東京に出て、病気になって帰ってきます。

ナスミの闘病と死から物語は始まり、ナスミという一人の女性の死が周囲に与える影響が丁寧に綴られていく物語です。

その影響は、姉の鷹子や夫の日出男など家族だけにとどまらず、元同僚や同級生、その妻にも及びます。ついには、次の世代にも…。

『さざなみのよる』の感想|人は死んでも、想いは生きていく

ナスミの亡くなるシーンがリアル

ナスミが亡くなるシーンが、妙にリアルで、病院で亡くなった父を思い出して泣いてしまって、最初なかなかページが進みませんでした。

一度危うくなって、みんなが集まって、持ち直して解散すると…。というシーンなんか、本当にリアルです。遺影をどうしようか?とスマホをひらいて、動画を見て、思い出と涙があふれるところとか。

か、勘弁して~!ってなるほど涙が溢れ、深呼吸して整えてから、読み直す、を何度も繰り返しました。

同じシーンを、視点を変えて読む面白さ

ドラマでも、この手法は好きです。
『コントが始まる』でもありましたが、ある同じシーンを、別の話で別の人の視点で読むと、
「あの人、このときそうだったんだ」と発見があり、また前の話を読み返したくなります。

ダイヤを売るエピソードや、ナスミの歯が折れちゃったエピソードなど。
時系列はバラバラなのに、キチンと繋がっていて、うまいなぁ、面白いなぁと唸りました。

ゾッとする幼児体験がまたリアル

幼い頃を思い出してみると、「あれって、実は危なかったよね」とゾッとする体験って、誰しもあるのではないでしょうか。

作中では、ナスミが幼女の頃に連れ去り未遂にあうエピソードが出てきます。
ここを読んで、お習字のお稽古に行くのに「送っていってあげるよ」と、父の知り合いだと名乗る知らないおじさんの車に乗りそうになったことを思い出しました。

アレは、乗っていたら今自分はここにいなかったかも知れない。

人の生死って、そういう紙一重の体験を経て、首の皮一枚で繋がっている。
そんなふうに書いてあります。

本当にそうですよね。今日元気でも、明日、急に何があるかわからない。
みんなしっかりと生きているようで、ギリギリのところで危険を回避して生きていたりするんだと。
だからこそ、生きている今を当たり前に思わず大事にしないといけないんですよね。

人は死んでも、想いは生き続ける

物語の冒頭で、ナスミは亡くなります。
しかし、鷹子や笑子、幼馴染の妻など…。一度でも彼女と関わった人の想いの中で、彼女はずーっと生きていました。

若くして亡くなっても、子供を残さなくても。人ってずっと生き続けるんだなと。
これって鬼滅の刃でも描かれていましたが、想いはずっとずっと繋がれていくんですよね。

私も子供はいないので、死んだら「ハイ。お終い。」ってなるのだと思っていたのですが…。
なんだか救われた思いがしました。私のことも、誰かが覚えててくれて。あのとき、こんな事言われたなぁ。とか思ってくれるのかしら。そうだと良いな。

亡くなった妻の家族と暮らす日出男、いい男。

ナスミの夫、日出男はナスミによって救われた愛子と結婚します。
子供も授かるのですが、ナスミの家族とずっとみんなで暮らしているのです。

亡くなった配偶者の家族と、ずっと暮らし続ける。
『昨夜のカレー、明日のパン』のギフとテツコさんみたいです。

「ナスミさんになりたい」とかつて願った愛子が、そのままナスミのいた場所にいるのが、奇跡みたいでとても好き。

「富士ストア」にいるんだ!日出男も愛子さんも、光ちゃんも!と気づいたとき、ハラハラと泣き出してしまいました。なんて素敵な奇跡を描いてくれるんだろう。木皿さん。

そして、受け入れる日出男!すごいぞ!日出男!愛が大きい!器もでかい!

『さざなみのよる』は人の死がテーマなのに前向きで癒やされる良作

人の死を扱っている作品で、こんなに心が温もることってあるでしょうか。
あ、あるか、『昨夜のカレー、明日のパン』もそうだから。

木皿さんの小説は、いつもそう。
読んでいると、なぜかいつの間にか自分の心の傷がふさがって、痛みが和らいでいきます。

人の死がテーマの作品って、それだけで「重そう」で、なかなか食指が動かない人もいると思いますが、本作はちょっと泣いて、ケラケラっと笑って、なぜか読み終わると前向きになれる良作です。

胃もたれしないので、是非!ご一読ください!

NHKでやった『富士ファミリー』はアマプラのNHKオンデマンドでご覧になれるようです。
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